作ってみた:メディウム編3
今回は、メディウムを調合するためのニスを自作する方法を紹介します。
油彩画を教える学校などでもダンマルワニスの作り方は教えているようです。
ここでは、教科書にあるような伝統的な方法ではなくてもっと簡単な方法を試みました。
西洋絵画の画材と技法より、伝統的な樹脂ワニスの製法
ダンマルワニスとコーパルワニスを作る
樹脂ワニスの作成
道具
計量器・小皿・蓋のできる瓶・濾過用の空き瓶・コーヒーフィルター・じょうご・保存用の瓶・ラベル・(糊)・(ホッチキス)・カナヅチ・新聞紙・乳鉢
材料
コーパルガムは、常温で精油に溶解するランニング済のものを使用します。ランニング済のコーパル樹脂はブラックコーパルと呼ばれています。
重量比
樹脂:精油=1:2
作業手順
1:樹脂を粉砕します。
最初に樹脂を砕いて細かくしておくと溶剤に溶けやすいのです。
実はここがキーポイントなのです。
新聞紙にくるんだ樹脂をカナヅチでぶったたいて粉砕します。
その後、乳鉢で粉になるまで挽いてやると、なお良い結果が得られます。
2:計量した樹脂と溶剤を瓶に投入します。
3:時々、瓶を振りながら2日ほど放置しておきます。
4:樹脂溶液を濾過し、保管用の容器に移します。
5:ラベルを貼り冷暗所にて保管します。
ダンマルワニスの用途
ダンマルワニスには次の3つの用途があります。
1:保護用ワニス
2:加筆用ワニス
3:メディウムの材料
ダンマルワニスからタブローとルツーセをつくる。
ダンマルワニスにテレピンを加えることで、画面の保護用のタブローと加筆用のルツーセを作ることが出来ます。
保護用ワニス(タブロー)
ダンマルガム 1
テレピン 3~4
加筆用ワニス(ルツーセ)
ダンマルガム 1
テレピン 5以上
ダンマルワニス(調合用)
ダンマルガム 1
テレピン 2
市販の樹脂ワニス
コーパルワニス
市販のシッカチーフ・フラマン(ルフラン&ブルジョア)やジャパン・ゴールドサイズ(ホルベイン)は、コーパル樹脂と揮発油のテレピン、乾性油のスタンドオイルが含まれていますが、その成分比率は公開されていません。
コーパルワニスは自作しておけば、成分比率がわかっているためメディウムを調合するときにとても便利です。
マスチックワニス
国内メーカーの市販のマスチックワニスには、クサカベ製があります。
かつては、33%溶液でしたが、現在は25%溶液として売られています。
ブラックオイルを発売したのと同じ時期に成分比率が変えられているのです。
市販品で作るメギルプ
クサカベ製ブラックオイル
クサカベ製のブラックオイルと、同社製のマスチックバニスを使ってメギルプを作るときの成分比率は次のようになります。
ブラックオイル:マスチックバニス=3:4
乾性油:マスチック樹脂:テレピン
=3:1:3
樹脂率(樹脂/樹脂+乾性油)=25%
この配合であれば、問題なくジェル化します。しかし、これ以上乾性油の配合比を増やしてしまうとジェル化はしませんでした。
ブラックオイル:マスチックバニス=1:1
乾性油:マスチック樹脂:テレピン
=4:1:3
樹脂率(樹脂/樹脂+乾性油)=20%
この配合比では、一日おいて半分ほどかろうじてジェル化しました。
半年おいても流動的性を残したジェルでした。
この配合比でもなかなかジェル化しませんでしたから、自作のブラックオイルで作った次の配合比のメギルプはクサカベ性のブラックオイルでは作れないようです。
乾性油:マスチック樹脂:テレピン
=6: 1:3
樹脂率(樹脂/樹脂+乾性油)=14%
写真は、クサカベ製のブラックオイルと各メーカーのマスチックバニスを1:1の配合比で混ぜてメギルプを作成したときの資料です。
日本の消費者への配慮
ブラックオイルの色を明るくしたのは、日本の消費者に配慮したのだと思います。
マスチックバニスも、他社製品に比べて随分と明るい色をしています。
日本製の油絵の具は、消費者のご要望からとても安定した製品となっています。
反面、展色材(混ぜもの)が増えてしまい、顔料の配合比が低くなっているのが現状です。
同様な配慮から、黒くないブラックオイルが製品として作られたものと思われます。
まっくろくろすけきぼんぬ
しかし、使う側からの意見としては、純粋にまっくろくろすけなブラックオイルが欲しいのです。
ブラックオイルを自作するのは大変なのです。
まっくろくろすけなブラックオイルを使って作ったメギルプもやはり濃い色をしています。そして、描いた後に少し暗変します。
そこは、少し明るめに描いておけば良いことなので、気にはならないのです。
きっと、こうした点もクレームの対象となってしまうのでしょうね。おばちゃんたちはうるさいですから。
玄人志向
パソコンパーツのメーカーに、玄人志向というブランドがあります。パソコン自作派の玄人のためのブランドなのです。
画材メーカーさんにも、こんなブランドがあればいいのにと思っています。
絵の具のチューブから分離した油が出てきても決して文句は言わない。
むしろ、ニヤリとする。展色材が少ない証拠ですからね。そうしたちょっとオタクな人対象のブランド。
玄人専用というと、勘違いするおばちゃんたちがいますから、オタク御用達としておけばクレーム対策にもなるかと思うのです。
参考:玄人志向
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